第1章 GNU/Linux チュートリアル

目次

1.1. コンソールの基礎
1.1.1. シェルプロンプト
1.1.2. X の下でのシェルプロンプト
1.1.3. root アカウント
1.1.4. root シェルプロンプト
1.1.5. GUI のシステム管理ツール
1.1.6. 仮想コンソール
1.1.7. コマンドプロンプトからの退出方法
1.1.8. システムをシャットダウンする方法
1.1.9. まともなコンソールの復元
1.1.10. 初心者向け追加パッケージの提案
1.1.11. 追加のユーザーアカウント
1.1.12. sudo の設定
1.1.13. お遊びの時間
1.2. Unix-like ファイルシステム
1.2.1. Unix ファイルの基礎
1.2.2. ファイルシステムの内側
1.2.3. ファイルシステムのパーミッション
1.2.4. 新規作成ファイルのパーミッションのコントロール: umask
1.2.5. ユーザーのグループ (group) のパーミッション
1.2.6. タイムスタンプ
1.2.7. リンク
1.2.8. 名前付きパイプ (FIFO)
1.2.9. ソケット
1.2.10. デバイスファイル
1.2.11. 特別なデバイスファイル
1.2.12. procfs と sysfs
1.3. ミッドナイトコマンダー (MC)
1.3.1. MC のカスタム化
1.3.2. MC の始動
1.3.3. MC のファイルマネージャー
1.3.4. MC のコマンドライントリック
1.3.5. MC の内部エディター
1.3.6. MC の内部ビューワー
1.3.7. MC の自動起動機能
1.3.8. MC の FTP 仮想ファイルシステム
1.4. 基本の Unix 的作業環境
1.4.1. login シェル
1.4.2. Bash のカスタム化
1.4.3. 特別のキーストローク
1.4.4. Unix 流のマウス操作
1.4.5. ページャー
1.4.6. テキストエディター
1.4.7. デフォールトのテキストエディターの設定
1.4.8. Vim のカスタム化
1.4.9. シェル活動の記録
1.4.10. 基本 Unix コマンド
1.5. シェルプロンプト
1.5.1. コマンド実行と環境変数
1.5.2. "$LANG" 変数
1.5.3. "$PATH" 変数
1.5.4. "$HOME" 変数
1.5.5. コマンドラインオプション
1.5.6. シェルグロブ
1.5.7. コマンドの戻り値
1.5.8. 典型的なコマンドシーケンスとシェルリディレクション
1.5.9. コマンドエリアス
1.6. Unix 的テキスト処理
1.6.1. Unix テキストツール
1.6.2. 正規表現
1.6.3. 置換式
1.6.4. 正規表現を使ったグローバル置換
1.6.5. テキストファイルからのデーター抽出
1.6.6. コマンドをパイプするためのスクリプト断片

コンピューターシステムを学ぶことは新しい外国語を学ぶことに似ていると考えます。チュートリアルブックは有用ですが、実際に自ら使って学ぶことが必要です。円滑なスタートが出きるように、いくつかの基本的なポイントを説明します。

Debian GNU/Linux の強力なデザインはマルチユーザーマルチタスクという Unix オペレーティングシステムに由来します。これら Unix と GNU/Linux の特徴や類似点の強力さを活用することを覚えましょう。

Unix 対象の文書を避けたり、GNU/Linux に関する文書だけに頼ることは、有用な情報を見逃すことになるので止めましょう。

[注記] 注記

Unix 的システムをコマンドラインツールで少々使った経験があれば、私がここで説明することはすべてご存知でしょう。リアリティーチェックと記憶を呼び戻すのにこれを使って下さい。

1.1. コンソールの基礎

1.1.1. シェルプロンプト

X Window システムgdm 等のディスプレーマネージャーとともにインストールした場合以外には、システム起動の際に文字の login スクリーンが現れます。あなたのホスト名が foo と仮定すると、login プロンプトは次に示すような見えます。

foo login:

GNOMEKDE のような GUI 環境をインストールした場合には、Ctrl-Alt-F1 とすることで login プロンプトが出て、Alt-F7 とすることで GUI 環境に戻れます (詳細は下記の「仮想コンソール」参照)。

login プロンプトであなたのユーザー名 (例えば penguin) を打鍵し Enter キーを押します。さらにあなたのパスワードを打鍵し Enter キーを再び押します。

[注記] 注記

Unix の伝統に従い、Debian システムではユーザー名とパスワードに関して大文字小文字の区別をします。ユーザー名は通常小文字のみから選ばれます。最初のユーザーアカウントは通常インストールの際に作られます。追加のユーザーアカウントは root によって adduser(8) を用いて作られます。

"/etc/motd" (本日のメッセージ: Message Of The Day) に保存されている歓迎メッセージとコマンドプロンプトを表示しシステムが起動されます。

Debian GNU/Linux lenny/sid foo tty1
foo login: penguin
Password:
Last login: Sun Apr 22 09:29:34 2007 on tty1
Linux snoopy 2.6.20-1-amd64 #1 SMP Sun Apr 15 20:25:49 UTC 2007 x86_64

The programs included with the Debian GNU/Linux system are free software;
the exact distribution terms for each program are described in the
individual files in /usr/share/doc/*/copyright.

Debian GNU/Linux comes with ABSOLUTELY NO WARRANTY, to the extent
permitted by applicable law.
foo:~$

ここで、Debian GNU/Linux システムがフリーソフトで無保証であるという、歓迎メッセージの主要部分は "/etc/motd.tail" ファイルを編集することでカスタム化できます。最初の行は "uname -snrvm" 用いたシステム情報から生成されます。

これであなたはシェルの中にいます。シェルはあなたからのコマンドを解釈します。

1.1.2. X の下でのシェルプロンプト

インストールの際に "Desktop environment" タスクを選定し GNOMEgdm とともに X Window システムをインストールした場合には、システムの起動するとグラフィカルな login プロンプトのスクリーンが表示されます。あなたのユーザー名とパスワードを入力することで非特権ユーザーアカウントに login できます。タブ (tab) を用いたりマウスの第一クリックを用いるとユーザー名とパスワードの間を行き来できます。

gnome-terminal(1) や rxvt(1) や xterm(1) のような x-terminal-emulator プログラムを X の下で起動するとシェルプロンプトが得られます。GNOME デスクトップ環境下では、"Applications" → "Accessories" → "Terminal" とクリックしてもうまくいきます。

次の「仮想コンソール」も参照下さい。

デスクトップ環境 (例えば fluxbox) 次第ではメニューの起点がよく分からないことがあります。そんな時はスクリーンの中央を (右)クリックしてメニューが表示されることを期待しましょう。

1.1.3. root アカウント

root アカウントはスーパーユーザーとか特権ユーザーとも呼ばれます。このアカウントからは次のようなシステム管理活動ができます。

  • ファイルパーミッションによらずシステム上の任意ファイルに関しての、読出し・書込み・削除
  • システム上のいかなるファイルに関して、ファイルの所有者やパーミッション設定
  • システム上の非特権ユーザーのパスワードを設定
  • パスワード無しに任意アカウントへの login

root アカウントの権限を使うには、この無制限の権限ゆえ配慮と責任ある行動が求められます。

[警告] 警告

root のパスワードを他人に決して教えてはいけません。

[注記] 注記

ファイル (Debian システムにとってはファイルの一種である CD-ROM 等のハードウエアーデバイスも含む) パーミッションは、非 root ユーザーによるそのファイルの使用やアクセスをできなくなくすることがあります。この様な状況の下では root アカウントを使うことが簡便なテスト法ですが、問題解決はファイルパーミッションとユーザーのグループのメンバーシップを適正に設定する必要があります (「ファイルシステムのパーミッション」参照)。

1.1.4. root シェルプロンプト

root のパスワードを使って root のシェルプロンプトを使えるようにする基本的な方法を次に記します。

  • 文字ベースのログインプロンプトに root と入力します。
  • GNOME デスクトップ環境下で、"Applications" → "Accessories" → "Root Terminal" とクリックします。
  • どのユーザーシェルプロンプトからでも "su -l" と入力します。

    • 現ユーザーの環境を一切引き継がません。
  • どのユーザーシェルプロンプトからでも "su" と入力します。

    • 現ユーザーの環境を一部引き継ぐ。

1.1.5. GUI のシステム管理ツール

デスクトップのメニューが GUI のシステム管理ツールを適切な権限とともに自動的に起動しない場合、gnome-terminal(1) や rxvt(1) や xterm(1) のような X ターミナルエミュレーターの root シェルプロンプトから起動できます。「root シェルプロンプト」 and 「X クライアントを root で実行」を参照下さい。

[警告] 警告

gdm(1) 等のディスプレーマネージャーのプロンプトに root と入力して、X ディスプレー / セッションマネージャーを root アカウントのもとで決して起動してはいけません。

[警告] 警告

クリチカルな情報が表示されている際には、あなたの X スクリーンを覗き見られるかもしれないのでリモートの信頼できない GUI プログラムを決して実行してはいけません。

1.1.6. 仮想コンソール

デフォールトの Debian システムでは、6つの切り替え可能な VT100 様の文字コンソールがあり、Linux ホスト上で直接コマンドシェルを起動できるようになっています。GUI 環境下でない場合は、Left-Alt-keyF1F6 の中の一つのキーを同時に押すことで仮想コンソール間の切り替えができます。仮想ターミナルそれぞれに独立したアカウントでログインすることができ、。マルチユーザー環境を提供します。このマルチユーザー環境は Unix の偉大な機能で、癖になります。

X Window システムの下では、Ctrl-Alt-F1 キーを押す、つまり left-Ctrl-keyleft-Alt-keyF1-key キーを同時に押すと文字コンソール1にアクセスできます。通常仮想コンソール7で実行されている X Window システムへは Alt-F7 を押すことにより戻れます。

これとは別の方法で、例えば仮想ターミナル1という今とは違う仮想ターミナルへの変更がコマンドラインから出来ます。

# chvt 1

1.1.7. コマンドプロンプトからの退出方法

コマンドプロンプトで Ctrl-D、つまり left-Ctrl-keyd-key の同時押しをするとシェルでのアクティビティーを終了できます。文字コンソールの場合は、こうすると login プロンプト戻ります。これらのコントロール文字は通常 "control D" と大文字を使って表記されますが、Shift キーを押す必要はありません。また Ctrl-D に関する簡略表記 ^D も使われます。この代わりに "exit" とタイプすることができます。

x-terminal-emulator(1) にあっては、このようにすることで x-terminal-emulator のウィンドウが閉じることができます。

1.1.8. システムをシャットダウンする方法

ファイル操作の際にパーフォーマンス向上のためにメモリーへのデーターのキャッシュがされる他の現代的な OS と同様に、Debian システムでも電源を安全に切る前に適正なシャットダウン手順を取る必要があります。これはすべてのメモリー上の変更を強制的にディスクに書き出しすことで、ファイルの完全性を維持するためです。ソフトウエアーによる電源コントロールができる場合、シャットダウン手続きはシステムの電源を自動的に落とします。(これがうまくいかない時には、シャットダウン手続きの後で数秒間電源ボタンを押す必要があるかもしれません。)

通常のマルチユーザーモードからのシステムのシャットダウンがコマンドラインから出来ます。

# shutdown -h now

シングルユーザーモードからのシステムのシャットダウンがコマンドラインから出来ます。

# poweroff -i -f

この他に、"/etc/inittab" に "ca:12345:ctrlaltdel:/sbin/shutdown -t1 -a -h now" と書かれていれば、Ctrl-Alt-Delete (left-Ctrl-keyleft-Alt-KeyDelete の同時押し) を入力するシャットダウン方法もあります。

「SSH 上のリモートシステムをシャットダウンする方法」を参照下さい。

1.1.9. まともなコンソールの復元

例えば "cat <some-binary-file>" のような変な事をした後でスクリーンが無茶苦茶になった場合、コマンドプロンプトに "reset" と入力して下さい。このときコマンドを入力してもスクリーンには読み取れる表示がされないかもしれません。"clear" とすればスクリーンが消去できます。

1.1.10. 初心者向け追加パッケージの提案

デスクトップ環境タスク抜きの最小限インストレーション Debian システムですら基本的な Unix 機能は提供されますが、コマンドラインや curses に基づく mcvim 等のいくつかの文字ターミナルパッケージを apt-get(8) を使って次のように追加インストールすることから始めることを初心者にお薦めします。

# apt-get update
 ...
# apt-get install mc vim sudo
 ...

既にこれらのパッケージがインストールされている場合には、新しいパッケージはインストールされません。

表1.1 興味あるテキストモードのプログラムパッケージのリスト

パッケージ ポプコン サイズ 説明
mc * V:12, I:28 6508 テキストモードの全画面ファイルマネージャー
sudo * V:42, I:71 668 ユーザーに限定的な root 権限を与えるプログラム
vim * V:15, I:33 1792 Unix テキストエディター Vi IMproved (改良版 Vi)、プログラマーのためのテキストエディター (標準版)
vim-tiny * V:16, I:92 776 Unix テキストエディター Vi IMproved (改良版 Vi)、プログラマーのためのテキストエディター (軽量版)
emacs23 * V:3, I:4 13016 GNU プロジェクト Emacs、Lisp に基づく拡張可能なテキストエディター (23版)
w3m * V:24, I:84 1992 テキストモード WWW ブラウザー
gpm * V:3, I:4 484 テキストコンソール上の Unix 式のカットアンドペースト (daemon)

いくつかの参考資料を読むのも良いことです。

表1.2 有用な文書パッケージのリスト

パッケージ ポプコン サイズ 説明
doc-debian * I:82 408 Debian プロジェクトの文書、(Debian FAQ) 他
debian-policy * I:3 3500 Debian ポリシーマニュアルと関連文書
developers-reference * I:1.0 1388 Debian 開発者のためのガイドラインと情報
maint-guide * I:0.7 776 Debian 新メンテナ向けガイド
debian-history * I:0.3 3736 Debian プロジェクトの歴史
debian-faq * I:66 1224 Debian FAQ (よくある質問集)
doc-linux-text * I:82 8616 Linux HOWTO と FAQ (テキスト版)
doc-linux-html * I:0.7 62564 Linux HOWTO と FAQ (HTML 版)
sysadmin-guide * I:0.2 964 Linux システム管理者ガイド

これらのパッケージの一部を次のようにしてインストールします。

# apt-get install package_name

1.1.11. 追加のユーザーアカウント

次の練習のためにあなたのメインのユーザーアカウントを使いたくない場合には、例えば fish という追加のユーザーアカウントを作成できます。root シェルプロンプトで次のように入力します。

# adduser fish

すべての質問に返事をします。

こうすることで fish という名前の新規アカウントが作られます。練習の後で、このユーザーとそのホームディレクトリーは次のようのすれば削除できます。

# deluser --remove-home fish

1.1.12. sudo の設定

ラップトップ PC 上のデスクトップの Debian システム等のような典型的単一ユーザーワークステーションでは次のような単純な sudo(8) の設定をして、非特権ユーザー (例えば penguin) に管理者権限を (root パスワードではなく) ユーザー自身のパスワードで与えることがよくあります。

# echo "penguin  ALL=(ALL) ALL" >> /etc/sudoers

これに代え、次のようにして非特権ユーザー penguin にパスワード一切無しに管理者権限を与えることもよくあります。

# echo "penguin  ALL=(ALL) NOPASSWD:ALL" >> /etc/sudoers

このトリックの使用は、単一ユーザーワークステーション上であなた自身が管理者でユーザーである際のみに限るべきです。

[警告] 警告

システムセキュリティー上非常に悪い事態を招くので、マルチユーザーワークステーション上の通常ユーザーアカウントに対してこの様な設定をしてはいけません。

[注意] 注意

上記例のような penguin のパスワードとアカウントは root パスワードや root アカウント同様の保護が必要です。

[注意] 注意

この文脈上の管理者権限はワークステーションに関するシステム管理業務をする権限を与えられた人に属します。そのような権限と能力を持っていなければ、あなたの会社の管理部門の管理職や上司とはいえこのような権限を与えてはいけません。

[注記] 注記

特定デバイスや特定ファイルへのアクセスの権限を与えるには、sudo(8) をつかって得た root 権限を用いるのではなく、group を使って限定的アクセス与えることを考えるべきです。

[注記] 注記

sudo(8) を使ってもう少し工夫された注意深い設定をすれば、共有システム上の他のユーザーに root パスワードを教えること無く限定的管理権限を許可することができます。こうすることは、誰が何をしたかを明らかにするので、複数の管理者がいるホストにおける責任の所在を明らかにします。ただ、誰にもそんな権限を与えたく無いかもしれません。

1.1.13. お遊びの時間

非特権ユーザーアカウントを使う限り全くリスク無く Debian システムでお遊びをする準備万端です。

何故なら、たとえデフォールトのインストール後ですら Debian システムは非特権ユーザーがシステムに損害を与えられないように適正なファイルパーミッションが設定されているからです。もちろん悪用可能な穴が残っているかもしれませんが、こんな問題まで心配する人はこのセクションを読んでいるべきではなく、Securing Debian Manual を読むべきです。

Debian システムを Unix 的システムとして次に学びましょう:

1.2. Unix-like ファイルシステム

GNU/Linux や他の Unix 的オペレーティングシステムでは、ファイルディレクトリーに整理されています。すべてのファイルやディレクトリーは、"/"を根 (root) に持つ一本の大きな木 (ツリー) のようにアレンジされています。

このようなファイルやディレクトリーはいくつかのデバイスに展開することができます。あるデバイス上にあるファイルシステムを大きなファイルツリーにマウントするのに mount(8) が使われます。その逆に、それを切り離すのに umount(8) が使われます。最近の Linux カーネルでは、mount(8) をオプションとともに用いると、ファイルツリーの一部を別のところと結びつけたり、共有・非共有・従属・バインド不可としてファイルシステムをマウントもできます。各ファイルシステムごとの使用可能なマウントオプションは "/share/doc/linux-doc-2.6.*/Documentation/filesystems/" にあります。

Unix システム上のディレクトリーは、一部の他システム上ではフォルダと呼ばれます。Unix システム上では "A:" のようなドライブというコンセプトが無いこと覚えておいて下さい。単一のファイルシステムがあって、そこにすべてが含まれています。これは Windows と比べた際の大きな利点です。

1.2.1. Unix ファイルの基礎

Unix ファイルの基礎は以下です。

  • ファイル名は大文字と小文字を区別します。"MYFILE" と "MyFile" は異なるファイルです。
  • ルートディレクトリーはフィルシステムの根 (ルート、root) を意味して、単に "/" と記載されます。これを root ユーザーのホームディレクトリー "/root" とは混同しないで下さい。
  • 全てのディレクトリーには "/" 以外の文字・記号からなる名前がついています。ルートディレクトリーは例外で、その名前は "/" ("スラッシュ" とか "ルートディレクトリー" と読まれます) でその名前を変えることはできません。
  • 各ファイルやディレクトリーは、たどっていくとファイルに到達するディレクトリーの列が示される、完全に記述したファイル名とか絶対ファイル名とかパスにより指定されます。これらの3つの表現は同義語です。
  • 全ての完全に記述したファイル名は "/" ディレクトリーで始まり、ファイル名中の各ディレクトリーやファイル名の間には "/" がはさまります。最初の "/" はディレクトリー名です。その他の "/" は、次のサブディレクトリーとの区別をします。そして最後には実際のファイルの名前がきます。ちょっと混乱しそうですので、次の完全に記述したファイル名 の例をご覧下さい: "/usr/share/keytables/us.map.gz"。 一方このベース名である、"us.map.gz" だけをファイル名と呼ぶ人もあります。
  • ルートファイルシステムは "/etc/" や "/usr/" のような複数の枝を持ちます。これらのサブディレクトリーもまた "/etc/init.d/" や "/usr/local/" のように、さらにサブディレクトリーに枝別れします。これらの全体をまとめてディレクトリーツリーと呼びます。絶対ファイル名はツリーの根元 ("/") から枝の先 (ファイル) までの経路として考えることもできます。また、あたかもディレクトリーツリーを家系図のように人が話すのを聞いたことがあるでしょう。あたかもそれぞれのサブディレクトリーにがあるとし、パスはファイルの完全な祖先の系図のように表現します。ルートディレクトリーではない他の場所から始まる相対パスもあります。ディレクトリー "../" は親ディレクトリーを参照していることを覚えておきましょう。このような呼び方はディレクトリーのような構造を持つ他の階層的ツリー状のデーター構造体でもよく使われます。
  • ハードディスクのような物理デバイスに対応したパス名の要素は存在しません。ここが、パス名に "C:\" のようなデバイス名が含まれる RT-11CP/MOpenVMSMS-DOSAmigaOSMicrosoft Windows と違う点です。(但し、通常のファイルシステム中に物理デバイスを示すディレクトリー項目はあります。「ファイルシステムの内側」参照。)
[注記] 注記

ほとんど全ての文字や記号をファイル名中に使えますが、実際そうすることは賢明ではありません。スペースやタブや改行や他の特殊文字: { } ( ) [ ] ' ` " \ / > < | ; ! # & ^ * % @ $ はコマンドラインで特別な意味を持つので避けるべきです。名前の中の単語間には、ピリオドやハイフンや下線を選んで区別します。各語頭を "LikeThis" のように語頭を大文字にすることもできます。経験を積んだ Linux のユーザーはファイル名中にスペースが入ることを避けます。

[注記] 注記

"root" (ルート) と言う言葉は "root ユーザー" と言う意味でも "ルートディレクトリー" と言う意味でも使われます。それがいずれかは使われている文脈から明かです。

[注記] 注記

パスと言う言葉は上述の完全に記述したファイル名に関して使われるばかりではなくコマンドサーチパスにも使われます。どちらの意味かは文脈から明かです。

ファイル階層について詳細に学ぶ最も良い方法は、Filesystem Hierarchy Standard ("/usr/share/doc/debian-policy/fhs/fhs-2.3.txt.gz" や hier(7)) に記述されています。手始めとして次の事実を覚えるべきです。

表1.3 重要ディレクトリーの使い方のリスト

ディレクトリー ディレクトリーの用途
/ ルートディレクトリー
/etc/ システム全体の設定ファイル
/var/log/ システムのログファイル
/home/ 全ての非特権ユーザーのホームディレクトリー

1.2.2. ファイルシステムの内側

Unix の伝統に従い、Debian/Linux システムはハードディスクや他のストレージデバイス上に存在する物理データーを表す ファイルシステムを提供し、コンソールスクリーンやリモートのシリアルコンソールなどのハードウェアデバイスとの相互作用が "/dev/" の下に統一された形式で表されています。

Debian/Linux システム上の、各々のファイルやディレクトリーや名前付きパイプ (2つのプログラムがデーターを共有する方法) や物理デバイスは、それぞれの所有者 (owner) やデーターが所属するグループ (group) や最終アクセス時間などの付帯属性 (attribute) を記述する inode と呼ばれるデーター構造を持ちます。 Debian GNU/Linux システムでの inode 構造 の正確な定義を知るには、"/usr/include/linux/fs.h" をご覧下さい。 ほとんど全てをファイルシステム表現しようというアイデアは Unix の発明でしたし、現代的な Linux カーネルはこのアイデアを一歩進めています。コンピューター上で実行されているプロセス情報さえファイルシステム中に見つけられます。

このような物理的実体と内部プロセスの抽象的かつ統一された表現は非常にパワフルなので、多くの全く異なるデバイスに同じコマンドを使用して同種の操作が行えます。実行中のプロセスに繋がった特殊なファイルにデーターを書き込むことでカーネルが如何に動作するかまで変更できます。

[ティップ] ティップ

ファイルツリーや物理的実体の間の関係を確認する必要がある際には、mount(8) を引数無しで実行して下さい。

1.2.3. ファイルシステムのパーミッション

Unix 的システムのファイルシステムのパーミッションは次の3つの影響されるユーザーのカテゴリーのために定義されています。

  • ファイルを所有するユーザー (user) (u)
  • ファイルが所属するグループ (group) 中の他ユーザー (g)
  • "世界" や "全員" とも呼ばれる、全他ユーザー (other) (o)

ファイルでは、それぞれに対応するパーミッションは次のようになります。

  • 読出し (read) (r) パーミッションはファイル内容確認を可能にします。
  • 書込み (write) (w) パーミッションはファイル内容変更を可能にします。
  • 実行 (execute) (x) パーミッションはファイルをコマンド実行を可能にします。

ディレクトリーでは、対応するパーミッションはそれぞれ次のようになります。

  • 読出し (read) (r) パーミッションはディレクトリー内容リストを可能にします。
  • 書込み (write) (w) パーミッションはディレクトリーへのファイルの追加削除を可能にします。
  • 実行 (execute) (x) パーミッションはディレクトリー内のファイルへのアクセスを可能にします。

ここで、ディレクトリーに関する実行 (execute) パーミッションとはディレクトリー内のファイルへの読出しを許可するのみならず、サイズや変更時間のようなアトリビュート閲覧を許可します。

ファイルやディレクトリーのパーミッション情報他を表示するには、ls(1) が使われます。"-l" オプション付きでこれを実行すると、次の情報がこの順序で表示されます。

  • ファイルのタイプ (最初の文字)
  • ファイルのアクセスパーミッション (次の9文字。ユーザーとグループと他者の順にそれぞれに対して3文字から構成されている)
  • ファイルへのハードリンク数
  • ファイルを所有するユーザー (user) の名前
  • ファイルが所属するグループ (group)
  • ファイルのサイズ (文字数、バイト)
  • ファイルの日時 (mtime)
  • ファイルの名前

表1.4 "ls -l" の出力の最初の文字のリスト

文字 意味
- 通常ファイル
d ディレクトリー
l シムリンク
c 文字デバイス名
b ブロックデバイス名
p 名前付きパイプ
s ソケット

root アカウントから chown(1) を使用することでファイルの所有者を変更します。ファイルの所有者又は root アカウントから chgrp(1) を使用することでファイルのグループを変更します。ファイルの所有者又は root アカウントから chmod(1) を使用することでファイルやディレクトリーのアクセスパーミッションを変更します。foo ファイルの操作の基本的文法は次の通り。

# chown <newowner> foo
# chgrp <newgroup> foo
# chmod  [ugoa][+-=][rwxXst][,...] foo

例えば次のようにするとディレクトリーツリーの所有者をユーザー foo に変更しグループ bar で共有できます。

# cd /some/location/
# chown -R foo:bar .
# chmod -R ug+rwX,o=rX .

更に特殊なパーミッションビットが3つ存在します。

  • セットユーザー ID ビット (ユーザーの x に代えて sS)
  • セットグループ ID ビット (グループの x に代えて sS)
  • スティッキビット (他ユーザーの x に代えて tT)

ここで、これらのビットの "ls -l" のアウトプットはこれらの出力によってかくされた実行ビットが非設定 (unset) の場合大文字となります。

セットユーザー ID を実行ファイルにセットすると、ユーザーはファイルの所有者 ID (例えば、root) を使って実行ファイルを実行することを許可されます。同様に、セットグループ ID を実行ファイルにセットすると、ユーザーはファイルのグループ ID (例えば、root) を使って実行ファイルを実行することを許可されます。これらの設定はセキュリティーを破壊するリスクを引き起こすので、これらのビットを有効にするには特別な注意が必要です。

セットグループ ID をディレクトリーに対して有効にすると、ディレクトリーに作成した全ファイルがディレクトリーのグループに所属するという BSD 的ファイル生成手法が有効になります。

スティッキビットをディレクトリーに対して有効にすると、ディレクトリーにあるファイルがファイルの所有者以外から削除されるのを防ぎます。"/tmp" のような全員書込み可能ディレクトリーやグループ書込み可能なディレクトリーなどのにあるファイルの内容を安全にするためには、書込みパーミッションを無効にするだけでなく、ディレクトリーにスティッキビットもセットする必要があります。さもなければ、ディレクトリーに書込みアクセスできるユーザーにより、ファイルが削除され、同じ名前で新規ファイルが作成されることを許してしまいます。

ファイルパーミッションの興味ある例を次にいくつか示します。

$ ls -l /etc/passwd /etc/shadow /dev/ppp /usr/sbin/exim4
crw------- 1 root root   108, 0 2007-04-29 07:00 /dev/ppp
-rw-r--r-- 1 root root     1427 2007-04-16 00:19 /etc/passwd
-rw-r----- 1 root shadow    943 2007-04-16 00:19 /etc/shadow
-rwsr-xr-x 1 root root   700056 2007-04-22 05:29 /usr/sbin/exim4
$ ls -ld /tmp /var/tmp /usr/local /var/mail /usr/src
drwxrwxrwt 10 root root  4096 2007-04-29 07:59 /tmp
drwxrwsr-x 10 root staff 4096 2007-03-24 18:48 /usr/local
drwxrwsr-x  4 root src   4096 2007-04-27 00:31 /usr/src
drwxrwsr-x  2 root mail  4096 2007-03-28 23:33 /var/mail
drwxrwxrwt  2 root root  4096 2007-04-29 07:11 /var/tmp

chmod(1) を用いて、ファイルパーミッションを記述するためのもう一つの数字モードが存在します。この数字モードは8進数を使った3桁から4桁の数字を用います。

表1.5 chmod(1) コマンドで用いられるファイルパーミッションの数字モード

数字 意味
1桁目 (任意) セットユーザー ID (=4) とセットグループ ID (=2) とスティキービット (=1) の和
2桁目 ユーザーに関する、読出し (read) (=4) と書込み (write) (=2) と実行 (execute) (=1) のファイルパーミッションの和
3桁目 グループに関して、同上
4桁目 ユーザーに関して、同上

これは複雑に聞こえるかもしれませんが、実際は本当にシンプルです。"ls -l" コマンドの出力の最初の数列 (2〜10列) を見て、それをファイルパーミッションのバイナリー表記 (2進数) ("-" を "0"、"rwx" を "1") として読むと、この数字モードの値はファイルパーミッションの8進数表現として意味を持ちます。

例えば、次を試してみて下さい:

$ touch foo bar
$ chmod u=rw,go=r foo
$ chmod 644 bar
$ ls -l foo bar
-rw-r--r-- 1 penguin penguin 17 2007-04-29 08:22 bar
-rw-r--r-- 1 penguin penguin 12 2007-04-29 08:22 foo
[ティップ] ティップ

シェルスクリプトから "ls -l" で表示される情報にアクセスする必要がある際には、test(1) や stat(1) や readlink(1) のような適切なコマンドの使用を考えるべきです。シェル組込みコマンドの "[" や "test" を使うのも手です。

1.2.4. 新規作成ファイルのパーミッションのコントロール: umask

新規作成ファイルのやディレクトリーに適用されるパーミッションは umask シェル組込みコマンドを使うことにより制限できます。dash(1) か bash(1) か builtins(7) をご覧下さい。

(ファイルパーミッション) = (要求されたパーミッション) & ~(umask 値)

表1.6 umask 値の例

umask 作成されるファイルパーミッション 作成されるディレクトリーパーミッション 使い方
0022 -rw-r--r-- -rwxr-xr-x ユーザーのみにより書込み可
0002 -rw-rw-r-- -rwxrwxr-x グループにより書込み可

Debian システムはユーザー専用グループ (UPG) 方式がデフォールト方式です。新規ユーザーがシステムに追加される毎に UPG は作成されます。UPG はそのグループを作成したユーザーと同じ名前を持ち、そのユーザーが UPG の唯一のメンバーです。UPG 方式では、全ユーザーが各自専用のグループを持つので umask を 0002 と設定しても安全です。(一部 Unix 系システムでは全一般ユーザーを1つの users グループに所属させることがよく行われます。そのような場合には安全のため 0022 と umask を設定します。)

1.2.5. ユーザーのグループ (group) のパーミッション

グループパーミッションを特定ユーザーに適用するには、"sudo vigr" を用いてそのユーザーをグループのメンバーにする必要があります。

[注記] 注記

もし "auth optional pam_group.so" 行が "/etc/pam.d/common-auth" に書き加えれ、"/etc/security/group.conf" に対応する設定がされていれば、実際のユーザーのグループメンバーシップは動的に割り当てられます。(4章認証参照。)

ハードウエアーデバイスは Debian システム上では一種のファイルでしかありません。CD-ROM や USB メモリースティックのようなデバイスをユーザーアカウントからアクセスするのに問題があった場合にはそのユーザーを該当するグループのメンバーにします。

いくつかのシステムが供給するグループはそのメンバーに root 権限無しに特定のファイルやデバイスにアクセスすることを可能にします。

表1.7 ファイルアクセスのためにシステムが供給する特記すべきグループのリスト

グループ アクセスできるファイルやデバイスの説明
dialout シリアルポート ("/dev/ttyS[0-3]") への全面的かつ直接のアクセス
dip 信頼できるピアーにダイヤルアップ IP 接続をするためのシリアルポートへの制限付きアクセス
cdrom CD-ROM や DVD+/-RW のドライバー
audio 音声デバイス
video 映像デバイス
scanner スキャナー
adm システムモニターのログ
staff 下級管理業務のためのディレクトリー: "/usr/local"、"/home"

[ティップ] ティップ

モデムの設定をしたりどこにでも電話したり等するには dialout グループに所属する必要があります。もし信頼できるピアーに関する事前定義された設定ファイル "/etc/ppp/peers/" が root によって作成されていると、dip グループに属するだけで pppd(8) や pon(1) や poff(1) コマンドを用いてダイヤルアップ IP 接続が作成できます。

いくつかのシステムが供給するグループはそのメンバーに root 権限無しに特定のコマンドを実行することを可能にします。

表1.8 特定コマンド実行のためにシステムが供給する特記すべきグループのリスト

グループ 実行可能なコマンド
sudo パスワード無しに sudo を実行
lpadmin プリンターのデーターベースからプリンターを追加・変更・削除するコマンドを実行
plugdev USB メモリーのようなリムーバブルデバイスに関して pmount(1) を実行

システムが供給するユーザーやグループの完全なリストは、base-passwd パッケージが供給する "/usr/share/doc/base-passwd/users-and-groups.html" の中にある最新バージョンの "Users and Groups" 文書を参照下さい。

ユーザーやグループシステムを管理するコマンドは passwd(5) や group(5) や shadow(5) や newgrp(1) や vipw(8) や vigr(8) や pam_group(8) を参照下さい。

1.2.6. タイムスタンプ

GNU/Linux ファイルのタイムスタンプには3種類あります。

表1.9 タイムスタンプのタイプのリスト

タイプ 意味
mtime ファイル内容変更時間 (ls -l)
ctime ファイル状態変更時間 (ls -lc)
atime ファイル最終アクセス時間 (ls -lu)

[注記] 注記

ctime はファイル作成日時ではありません。

  • ファイルが上書きされると、ファイルの mtimectimeatime の属性すべてが変更されます。
  • ファイルの所有者やパーミッションの変更をすると、ファイルの ctimeatime アトリビュートを変えます。
  • ファイルを読むとファイルの atime が変更されます。
[注記] 注記

Debian システム上のファイルを単に読むだけで inode 中の atime 情報を更新する書込みオペレーションが通常引き起こされることを覚えておいて下さい。ファイルシステムを "noatime" や "relatime" オプションを用いてマウントすることでシステムはこのようなオペレーションをしなくなるので、ファイルへの読出しアクセスを高速化できます。ハードディスクの活動を抑えパワーの節約ができるのでこのような設定はラップトップ向けに推奨されます。mount(8) を参照下さい。

既存ファイルのタイムスタンプを変更するには touch(1) コマンドを使って下さい。

タイムスタンプに関して、現代の英語ロケール ("en_US.UTF-8") では旧式の英語ロケール ("C") と違った文字列が ls コマンドから出力されます。

$ LANG=en_US.UTF-8  ls -l foo
-rw-r--r-- 1 penguin penguin 3 2008-03-05 00:47 foo
$ LANG=C  ls -l foo
-rw-r--r-- 1 penguin penguin 3 Mar  5 00:47 foo
[ティップ] ティップ

"ls -l" の出力のカスタム化は「時間と日付のカスタム化表示」を参照下さい。

1.2.7. リンク

"foo" というファイルを異なるファイル名 "bar" に結びつけるのには2つの方法があります。

リンク数の変化と rm コマンドの結果の微妙な違いについての次の例をご覧下さい。

$ echo "Original Content" > foo
$ ls -li foo
2398521 -rw-r--r-- 1 penguin penguin 17 2007-04-29 08:15 foo
$ ln foo bar     # hard link
$ ln -s foo baz  # symlink
$ ls -li foo bar baz
2398521 -rw-r--r-- 2 penguin penguin 17 2007-04-29 08:15 bar
2398538 lrwxrwxrwx 1 penguin penguin  3 2007-04-29 08:16 baz -> foo
2398521 -rw-r--r-- 2 penguin penguin 17 2007-04-29 08:15 foo
$ rm foo
$ echo "New Content" > foo
$ ls -li foo bar baz
2398521 -rw-r--r-- 1 penguin penguin 17 2007-04-29 08:15 bar
2398538 lrwxrwxrwx 1 penguin penguin  3 2007-04-29 08:16 baz -> foo
2398540 -rw-r--r-- 1 penguin penguin 12 2007-04-29 08:17 foo
$ cat bar
Original Content
$ cat baz
New Content

ハードリンクは同一ファイルシステム内に作れ、ls(1) コマンドに "-i" オプションを使って表示される inode 番号が同じです。

シンボリックリンクは上の例に示したように、常にファイルアクセスパーミッション "rwxrwxrwx" を持ちますので、シンボリックリンクが指すファイルのアクセスパーミッションが有効ファイルアクセスパーミッションとなります。

[注意] 注意

もし特段の理由がないなら複雑なシンボリックリンクやハードリンクを作らない方が一般的には良いでしょう。シンボリックリンクの論理的組み合わせがファイルシステム中でループになっているという悪夢を引き起こすかもしれません。

[注記] 注記

もしハードリンクを使う特段の理由がなければ、ハードリンクよりシンボリックリンクを使う方が一般的には良いでしょう。

"." ディレクトリーは、それ自身が中にあるディレクトリーとリンクしていますので、新規ディレクトリーのリンク数は2から始まります。".." ディレクトリーは親ディレクトリーとリンクしているので、ディレクトリーのリンク数は新規サブディレクトリーの増加に伴い増加します。

もし最近あなたが Windows から Linux に移動してきたなら、Unix のファイル名のリンクは Windows 上でもっとも似ている "shortcuts" との比較で如何にうまくできているかにすぐ気づくでしょう。ファイルシステム中に実装されているのでアプリケーションからはリンクされたファイルなのかオリジナルなのかの区別がつきません。ハードリンクの場合は実際全く違いはありません。

1.2.8. 名前付きパイプ (FIFO)

名前付きパイプは、パイプのように働くファイルです。何かをファイルに入れると、もう一方の端からそれが出てきます。こうしてこれは FIFO または First-In-First-Out (先入れ先出し) と呼ばれます。つまり、最初にパイプに入れられたものが最初にもう一方の端から出てきます。

名前付きパイプに書き込む場合、パイプに書き込むプロセスは情報がパイプから読出されるまで終了しません。名前付きパイプから読み出す場合、読出すプロセス何か読出すものが無くなるまで終了するのを待ちます。パイプのサイズは常に 0 です。 -- 名前付きパイプはデーターを保存せず、 シェルの "|" のように2つのプロセスをリンクするだけです。しかし、このパイプは名前を持つので、2つのプロセスは同じコマンドラインになくても良いし、同じユーザーにより実行される必要さえありません。パイプは Unix の非常に影響力ある発明でした。

例えば、次を試してみて下さい:

$ cd; mkfifo mypipe
$ echo "hello" >mypipe & # put into background
[1] 8022
$ ls -l mypipe
prw-r--r-- 1 penguin penguin 0 2007-04-29 08:25 mypipe
$ cat mypipe
hello
[1]+  Done                    echo "hello" >mypipe
$ ls mypipe
mypipe
$ rm mypipe

1.2.9. ソケット

ソケットはインターネットのコミュニケーションやデーターベースやオペレーティングシステム自身によって頻繁に使われます。ソケットは名前つきパイプ (FIFO) に似ており、異なるコンピューター間でさえプロセス間の情報交換を可能にします。ソケットにとって、これらのプロセスは同時に実行する必要も、同じ祖先プロセスの子供である必要もありません。これはプロセス間通信 (IPC) の終端点です。ネットワーク越しで異なるホストの間で情報の交換をすることも可能です。2つの典型的なソケットは、インターネットソケットUnix ドメインソケットです。

[ティップ] ティップ

"netstat -an" を実行すると特定のシステム上のソケットの全般状況がよく分かります。

1.2.10. デバイスファイル

デバイスファイルは、システム上のハードディスク、ビデオカード、ディスプレー、キーボードなどの物理デバイス又は仮想デバイス等を意味します。仮想デバイスの例として "/dev/console" として表されるコンソールがあります。

2タイプのデバイスファイルがあります。

  • 文字デバイス

    • 1文字毎にアクセス可能
    • 1文字 = 1 バイト
    • 例: キーボードデバイス、シリアルポート等
  • ブロックデバイス

    • 比較的大きなブロック単位でアクセス可能
    • 1 ブロック > 1 バイト
    • 例: ハードディスク等

デバイスファイルの読出し書込みが可能ですが、人間にとっては意味不明のバイナリーデーターがファイル中に多分含まれています。データーを直接デバイスファイルに書き込むことは時々ハードウェアの接続に関するトラブルシュートに役立ちます。例えば、プリンタデバイス "/dev/lp0" にテキストファイルをダンプしたり、 適切なシリアルポート "/dev/ttyS0" にモデムコマンドを送ることができます。しかし、注意深くやらないと、大災害をもたらすことがあります。くれぐれも気をつけて下さい。

[注記] 注記

通常のプリンターへのアクセスは lp(1) を使います。

次のように ls(1) を実行するとデバイスノード番号が表示されます。

$ ls -l /dev/hda /dev/ttyS0 /dev/zero
brw-rw---- 1 root cdrom   3,  0 2007-04-29 07:00 /dev/hda
crw-rw---- 1 root dialout 4, 64 2007-04-29 07:00 /dev/ttyS0
crw-rw-rw- 1 root root    1,  5 2007-04-29 07:00 /dev/zero
  • "/dev/hda" はメジャーデバイス番号3 とマイナーデバイス番号0 を持ちます。これは cdrom グループに所属するユーザーにより、読出し / 書込みアクセスが可能です。
  • "/dev/ttyS0" はメジャーデバイス番号4 とマイナーデバイス番号64 を持ちます。これは dialout グループに所属するユーザーにより、読出し / 書込みアクセスが可能です。
  • "/dev/zero" はメジャーデバイス番号1 とマイナーデバイス番号5 を持ちます。これは誰によっても読出し / 書込みアクセスが可能です。

Linux 2.6 システムでは、"/dev/" の下のファイルは udev(7) メカニズムで自動的に充足されます。

1.2.11. 特別なデバイスファイル

いくつかの特別なデバイスファイルがあります。

表1.10 スペシャルなデバイスファイルのリスト

デバイスファイル アクション レスポンスの説明
/dev/null 読出し "行末 (EOF) 文字 " を返す
/dev/null 書込み 何も返さず (底なしのデーターのゴミ捨て場)
/dev/zero 読出し "\0 (NUL) 文字" を返す (ASCII の数字のゼロとは違う)
/dev/random 読出し 真の乱数発生機から真のエントロピーのあるランダムな文字を返す (遅い)
/dev/urandom 読出し 暗号学的にセキュアーな擬似乱数発生機からランダムな文字を返す
/dev/full 書込み ディスクフル (ENOSPC) エラーを返す

以上はシェルのリディレクションとともによく使われます。(「典型的なコマンドシーケンスとシェルリディレクション」参照)。

1.2.12. procfs と sysfs

procfssysfs は "/proc" や "/sys" 上にマウントされる仮想ファイルシステムであり、カーネルの内部データー構造をユーザー空間にさらけ出します。言い換えると、オペレーティングシステムのオペレーションへの便利なのぞき窓となると言う意味で仮想といえます。

"/proc" ディレクトリー中には、システム上で実行されている各プロセスに対応したそのプロセス ID (PID) の名前がついたサブディレクトリー他があります。プロセス情報をアクセスする ps(1) のようなシステムユーティリティーはこのディレクトリー構造からその情報を得ています。

"/proc/sys/" の下のディレクトリーには実行時のカーネル変数を変更するインターフェースがあります。(専用の sysctl(8) コマンドもしくはその起動 / 設定ファイル "/etc/sysctrl.conf" によっても同様のことができます。)

[注記] 注記

Linux カーネルが "Too many open files" とエラーを出力することがあります。root のシェルから、例えば "echo "65536" > /proc/sys/fs/file-max" 等と "file-max" の値をより大きな値に増加することで解決できます。(旧式カーネルではこれが必要でした。)

特にあるファイル - "/proc/kcore" - に気づくと、パニックになる人がよくいます。これは一般に巨大です。これは (おおよそ) コンピューターのメモリーの内容のコピーです。これは kernel をデバッグするのに用いられます。コンピューターのメモリーを指す仮想ファイルなので、そのサイズに関して心配する必要は全くありません。

"/sys" の下のディレクトリーはカーネルから引き出されたデーター構造、その属性、それらの関連を含んでいます。一部カーネル変数を実行時に変更する機構もまた含まれたりします。

linux-doc-2.6.* パッケージで供給される Linux カーネル文書 ("/usr/share/doc/linux-doc-2.6.*/Documentation/filesystems/*") 中の "proc.txt(.gz)" や "sysfs.txt(.gz)" や関連する他の文書を参照下さい。

1.3. ミッドナイトコマンダー (MC)

Midnight Commander (MC) は Linux コンソールや他の端末環境のための GNU 製 "スイス軍ナイフ" です。標準 Unix コマンドを習うよりもより簡単なメニューを使ったコンソール経験が初心者にもできます。

"mc" と名づけられた Midnight Commander パッケージを次のようにしてインストールする必要があります。

$ sudo apt-get install mc

Debian システムを探検するために mc(1) コマンドを使います。これは学習するための最良の方法です。カーソールキーとエンターキーを使うだけで興味深い場所をちょっと探検します。

  • "/etc" とサブディレクトリー
  • "/var/log" とサブディレクトリー
  • "/usr/share/doc" とサブディレクトリー
  • "/sbin" と "/bin"。

1.3.1. MC のカスタム化

終了時に作業ディレクトリーを MC に変更させそのディレクトリーへ cd させるためには、mc パッケージが提供するスクリプトを "~/.bashrc" が含むように変更します。

. /usr/share/mc/bin/mc.sh

この理由は mc(1) ("-P" オプション項目) を参照下さい (今言っていることがよく分からないなら、これは後日しても大丈夫です。)

1.3.2. MC の始動

MC は次のようにして起動します。

$ mc

MC を使うとメニューを通じた最小限のユーザーの努力で全てのファイル操作の面倒が見られます。ヘルプ表示を出すには、ただ F1 を押すだけです。カーソールキーとファンクションキーの操作だけで MC を使えます。

[注記] 注記

gnome-terminal(1) のようなコンソールでは、ファンクションキーのキーストロークがコンソールプログラムに横取りされる事があります。gnome-terminal の場合、"Edit" → "Keyboard Shortcuts" とするとこの機能を無効にできます。

もし文字化け表示がされる文字符号化 (エンコーディング) 問題に出会った際には、MC のコマンドラインに "-a" を加えると解消する事があります。

これでも MC の表示の問題が解消しない際には、「ターミナルの設定」を参照下さい。

1.3.3. MC のファイルマネージャー

2つのディレクトリーパネルがありそれぞれファイルリストを含むのが標準です。他の便利なモードとしては、右側のウィンドウを "information" とセットしてファイルアクセス権情報などを表示するモードがあります。次にいくつかの不可欠なキーストロークを示します。gpm(8) デーモンを実行すると、Linux の文字ターミナルでマウスも使えます。(MC で通常の挙動のカットアンドペーストをさせるには、shift キーを押して下さい。)

表1.11 MC のキーバインディング

キー キーバインディング
F1 ヘルプメニュー
F3 内部ファイルビューワー
F4 内部エディター
F9 プルダウンメニュー有効
F10 MC を終了
Tab 二つのウィンドウの間を移動
Insert もしくは Ctrl-T コピーのような複数ファイル操作のためにファイルをマーク
Del ファイルの削除 (気をつけましょう -- MC を安全削除モードに設定)
カーソールキー 自明

1.3.4. MC のコマンドライントリック

  • cd コマンドは選択されたスクリーンに表示されたディレクトリーを変更します。
  • Ctrl-EnterAlt-Enter はファイル名をコマンドラインにコピーします。コマンドライン編集と一緒に cp(1) や mv(1) コマンドで御使用下さい。
  • Alt-Tab はシェルファイル名の自動展開の選択肢を表示します。
  • MC の引数で両ウィンドウのスタートディレクトリーを指定できます。例えば "mc /etc /root"。
  • Esc + n-keyFn (つまり、Esc + 1F1、等々、Esc + 0F10)
  • Esc をキーの前に押すのは Alt をキーと同時に押すのと同様の効果があります。つまり、Esc + cAlt-C と同じです。Esc はメタキーとよばれ時々 "M-" と表記されます。

1.3.5. MC の内部エディター

MC の内部エディターは興味深いカットアンドペースト機構を持ちます。F3 キーを押すと、選択範囲のスタートとマークし、次に F3 を押すと、選択範囲のエンドとマークし、選択範囲を強調します。そしてカーソールを動かすことができます。F6 を押すと、選択範囲はカーソールの位置に移動します。F5 を押すと、選択範囲はコピーされ、カーソールの位置に挿入されます。F2 を押すとファイルをセーブします。F10 を押すと選択範囲はなくなります。ほとんどのカーソールキーは直感的に働きます。

このエディターは次のコマンドの内のひとつを使いファイルに対し直接起動できます。

$ mc -e filename_to_edit
$ mcedit filename_to_edit

これはマルチモードエディターではありませんが、複数の Linux コンソール上で使用すると同じ効果を発揮させされます。ウィンドウ間のコピーを行うには、 Alt-<n> キーを押して仮想コンソールを切替えて、"File→Insert file" や "File→Copy to file" を用いてファイルの一部を他のファイルに動かします。

この内部エディターはお好きな他の外部エディターと置き換えが可能です。

また、多くのプログラムは使用するエディターを決定するために環境変数 "$EDITOR" や "$VISUAL" を使用します。最初 vim(1) や nano(1) が使いにくい場合には "~/.bashrc" に次に示す行を追加してエディターを "mcedit" に設定するのも一計です。

export EDITOR=mcedit
export VISUAL=mcedit

できればこれは "vim" に設定することを推奨します。

vim(1) が使いにくい場合には、mcedit(1) をほとんどのシステム管理業務のために使い続けられます。

1.3.6. MC の内部ビューワー

MC は非常に賢明なビューワーです。文書内の単語を検索するための素晴らしいツールです。私は "/usr/share/doc" ディレクトリー内のファイルに対していつもこれを使います。これは 大量にある Linux 情報を閲覧する最速の方法です。このビューワーは次のコマンドの内のひとつを使い直接起動できます。

$ mc -v path/to/filename_to_view
$ mcview path/to/filename_to_view

1.3.7. MC の自動起動機能

ファイルの上で Enter を押すと、適切なプログラムがファイル内容を処理します (「スタートするプログラムのカスタム化」参照)。これは非常に便利な MC の機能です。

表1.12 enter キー入力への MC の反応

ファイルタイプ enter キーへの反応
実行ファイル コマンド実行
man ファイル ビューワーソフトに内容をパイプ
html ファイル ウェッブブラウザーに内容をパイプ
"*.tar.gz" や "*.deb" ファイル サブディレクトリーであるかのように内容を表示

これらのビューワーや仮想ファイルの機能を有効にするためには、閲覧可能なファイルには実行可能と設定されていてはいけません。chmod(1) コマンドを使うか、MC のファイルメニュー経由で状態を変更して下さい。

1.3.8. MC の FTP 仮想ファイルシステム

MC を Internet 越しでの FTP を用いたファイルアクセスに使えます。F9 を押してメニューに行き、"p" を押して FTP 仮想ファイルシステムを有効にします。"username:passwd@hostname.domainname" の形式で URL を入力すると、あたかもローカルにあるかのようにリモートディレクトリーを取得します。

"[http.us.debian.org/debian]" を URL として Debian アーカイブを閲覧します。

1.4. 基本の Unix 的作業環境

MC はほとんど全てのことを可能にしますが、シェルプロンプトから実行されるコマンドラインツールの使用方法について学び、Unix 的な作業環境に親しむのは非常に重要なことです。

1.4.1. login シェル

ログインシェルは chsh(1) を使えば選択できます。

表1.13 シェルプログラムのリスト

パッケージ ポプコン サイズ POSIX シェル 説明
bash * V:91, I:99 3536 はい Bash: GNU Bourne Again SHell (デファクトスタンダード)
tcsh * V:4, I:27 768 いいえ TENEX C Shell: 拡張バージョンの Berkeley csh
dash * V:25, I:32 248 はい Debian の Almquist シェル、シェルスクリプトに好適
zsh * V:3, I:6 12784 はい Z shell: 多くの拡張された標準シェル
pdksh * V:0.2, I:1.1 468 はい パブリックドメインバージョンの Korn シェル
csh * V:0.6, I:2 404 いいえ OpenBSD の C シェル、Berkeley csh の派生
sash * V:0.2, I:1.0 856 はい 組み込みコマンド付きの独立シェル (標準の "/bin/sh" には不向き)
ksh * V:0.5, I:1.6 2800 はい 真の AT&T バージョンの Korn シェル
rc * V:0.16, I:1.6 204 いいえ AT&T Plan 9rc シェルの実装
posh * V:0.01, I:0.11 228 はい ポリシー準拠の通常シェル (pdksh の派生)

このチュートリアル章内では、インタラクティブなシェルは常に bash です。

1.4.2. Bash のカスタム化

vim(1) の挙動は "~/.vimrc" を使ってカスタム化できます。

例えば、次を試してみて下さい。

# CD upon exiting MC
. /usr/share/mc/bin/mc.sh

# set CDPATH to good one
CDPATH=.:/usr/share/doc:~:~/Desktop:~
export CDPATH

PATH="${PATH}":/usr/sbin:/sbin
# set PATH so it includes user's private bin if it exists
if [ -d ~/bin ] ; then
  PATH=~/bin:"${PATH}"
fi
export PATH

EDITOR=vim
export EDITOR
[ティップ] ティップ

bash に関する更なるカスタム化方法は、9章システムに関するティップ中の「着色化されたコマンド」等にあります。

1.4.3. 特別のキーストローク

Unix 的環境下では、特別の意味を持ったいくつかのキーストロークがあります。通常の Linux の文字ターミナルでは左側の CtrlAlt キーのみが期待にそって機能することに配慮下さい。次に特記すべき暗記するべきキーストロークを記します。

表1.14 Bash のキーバインディングのリスト

キー キーバインディングの説明
Ctrl-U カーソールの前の1行を消去
Ctrl-H カーソールの前の1文字を削除
Ctrl-D 入力を終了 (シェルを使用中の場合、シェルを終了)
Ctrl-C 実行中のプログラムを終了
Ctrl-Z プログラムをバックグラウンドジョブに移動し一時停止
Ctrl-S スクリーンへの出力を停止
Ctrl-Q スクリーンへの出力を再開
Ctrl-Alt-Del システムをリブート / 停止、inittab(5) 参照
Left-Alt キー (もしくは、Windows キー) Emacs および同様の UI でのメタキー
Up-arrow bash でコマンド履歴検索をスタート
Ctrl-R bash でインクリメンタルなコマンド履歴検索をスタート
Tab bash のコマンドラインのファイル名入力を完結
Ctrl-V Tab bash のコマンドラインで Tab を展開することなく入力

[ティップ] ティップ

ターミナルの Ctrl-S 機能は stty(1) で無効にできます。

1.4.4. Unix 流のマウス操作

Unix 流のマウス操作は3ボタンマウスが基本です。

表1.15 Unix 流のマウス操作

アクション 反応
マウスの左クリックアンドドラッグ 選択とクリップボードへのコピー
左クリック 選択スタート点の選択
右クリック 選択エンド点の選択とクリップボードへのコピー
中クリック クリップボードをカーソール位置に挿入 (ペースト)

現代的なホイールマウスの真ん中のホイールは中マウスボタンと見なされ、中クリックに使えます。2ボタンマウス状況では左右のボタンの同時押しが中クリックとして使えます。Linux の文字コンソールでマウスを使うには gpm(8) をデーモンで実行する必要があります。

1.4.5. ページャー

less(1) は機能拡張されたページャー (ファイル内容のブラウザー) です。"h" と入力するとヘルプが表示されます。これは、more(1) よりもはるかに機能があり、"eval $(lesspipe)" または "eval $(lessfile)" とシェルのスタートスクリプト中で実行することで更に機能拡充されます。詳しくは、"/usr/share/doc/lessf/LESSOPEN" を参照下さい。"-R" オプションを用いると生の option allows raw 文字出力が許可され、ANSI カラーエスケープシーケンスが有効になります。less(1) を参照下さい。

1.4.6. テキストエディター

Unix 的システムで人気のある、VimEmacs プログラムのいずれかのバリアントに習熟するべきです。

著者としては Vim コマンドに慣れることは正しいことだと考えています。なぜなら Vi エディターは Linux/Unix の世界では必ず存在するからです。(実際はオリジナルの vi か、新しい nvi がどこででも見つけられるプログラムです。これにもかかわらず Vim を著者が初心者のために選んだのは、より強力かつ動作が充分似ているのと、F1 キーを通じてヘルプが表示されるからです。)

これとは違い、EmacsXEmacs をエディターとして選ぶのも、特にプログラムをするには、非常に良い選択です。Emacs には、ニュースリーダ機能、ディレクトリーの編集機能、メール機能他の、過多な機能があります。プログラミングやシェルスクリプトの編集に使うときは、作業中のフォーマットをインテリジェントに認識し助力をしようとします。Linux 上で必要なプログラムは Emacs だけと考える人もいます。Emacs を今10分間学ぶことは将来何時間もの節約になります。Emacs を学ぶ際には GNU の Emacs マニュアルを持っておくことを高く推薦します。

これら全てのプログラムには練習しながら学べるようにチュータリングプログラムが普通付いてきます。Vim を "vim" とタイプして起動し、F1 キーを押します。最初の35行を読みます。カーソールを "|tutor|" に移動し Ctrl-] を押してオンラインの訓練コースを始めます。

[注記] 注記

Vim や Emacs のような良いエディターは、正しいフォント設定がされた UTF-8 ロケールの下の適正なオプションを使った x-terminal-emulator を使うと、UTF-8 や他のエギゾチックな符号化方式 (エンコーディング) のテキストを正しく扱えます。マルチバイトテキストに関するそれぞれの文書を参照下さい。

1.4.7. デフォールトのテキストエディターの設定

Debian にはいくつかの異なったエディターがあります。上述のように vim パッケージをインストールすることを推薦します。

Debian ではシステムのデフォールトのエディターへの統一されたアクセスを "/usr/bin/editor" コマンドを通じて提供しているので、他のプログラム (例えば reportbug(1) 等) が起動できます。設定変更は次で出来ます。

$ sudo update-alternatives --config editor

著者が "/usr/bin/vim.tiny" より "/usr/bin/vim.basic" を初心者に推薦するのはシンタクスハイライトをサポートしているからです。

[ティップ] ティップ

多くのプログラムは "$EDITOR" か "$VISUAL" という環境変数を使ってどのエディターを使うかを決めます (「MC の内部エディター」「スタートするプログラムのカスタム化」参照)。Debian システムの整合性のために、これらを "/usr/bin/editor" と設定しましょう。(歴史的には "$EDITOR" は "ed" で、"$VISUAL" は "vi" でした。)

1.4.8. Vim のカスタム化

vim(1) の挙動は "~/.vimrc" を使ってカスタム化できます。

例えば、次を試してみて下さい:

" -------------------------------
" Local configuration
"
set nocompatible
set nopaste
set pastetoggle=<f2>
syn on
if $USER == "root"
 set nomodeline
 set noswapfile
else
 set modeline
 set swapfile
endif
" filler to avoid the line above being recognized as a modeline
" filler
" filler

1.4.9. シェル活動の記録

シェルコマンドの出力はスクリーンから押し出されると永久に無くなってしまうかもしれません。シェルでの活動を後で見直せるようにファイルに記録しておくのは良いことです。この種の記録は何らかのシステム管理作業をする際には非常に重要です。

シェル活動の記録の基本方法は script(1) の下で実行することです。

例えば、次を試してみて下さい:

$ script
Script started, file is typescript

script の下で何なりのシェルコマンドを実行します。

Ctrl-D を押して script から脱出します。

$ vim typescript

「シェルの活動を綺麗に記録」を参照下さい。

1.4.10. 基本 Unix コマンド

基本的 Unix コマンドを学びます。ここでは一般的意味で "Unix" を使っています。いかなる Unix クローンの OS も等価なコマンドを提供します。Debian システムも例外ではありません。今一部コマンドが思うように機能しなくても心配しないで下さい。エリアスがシェルで使われた場合は、対応するコマンドの出力は変わります。次は順番に実行すると言う意味の例ではありません。

非特権ユーザーのアカウントから次のコマンドを全て実行します。

表1.16 基本の Unix コマンドのリスト

コマンド 説明
pwd カレント / ワーキングディレクトリーの名前を表示
whoami 現在のユーザー名を表示
id 現在のユーザーのアイデンティティ (名前と uid と gid と関連する group) を表示
file <foo> "<foo>" ファイルのファイルタイプを表示
type -p <commandname> "<commandname>" コマンドのファイルの位置を表示
which <commandname> , ,
type <commandname> "<commandname>" コマンドに関する情報を表示
apropos <key-word> "<key-word>" に関連したコマンドを発見
man -k <key-word> , ,
whatis <commandname> "<commandname>" コマンドに関する1行の説明を表示
man -a <commandname> "<commandname>" コマンドに関する説明を表示 (Unix スタイル)
info <commandname> "<commandname>" コマンドに関する比較的長い説明を表示 (GNU スタイル)
ls ディレクトリーの内容をリスト (非ドットファイルおよびディレクトリー)
ls -a ディレクトリーの内容をリスト (全ファイルおよびディレクトリー)
ls -A ディレクトリーの内容をリスト (ほとんど全ファイルおよびディレクトリー、".." と "." をスキップ)
ls -la ディレクトリーの内容を詳細情報とともにリスト
ls -lai ディレクトリーの内容を inode 番号と詳細情報とともにリスト
ls -d 現ディレクトリーの中の全ディレクトリーをリスト
tree ファイルツリーの内容を表示
lsof <foo> "<foo>" ファイルのオープンの状態をリスト
lsof -p <pid> プロセス ID: "<pid>" によってオープンされたファイルをリスト
mkdir <foo> 現ディレクトリー中に "<foo>" という新規ディレクトリー作成
rmdir <foo> 現ディレクトリー中の "<foo>" というディレクトリーを削除
cd <foo> 現ディレクトリー中もしくは "$CDPATH" 変数中にリストされたディレクトリー中の "<foo>" というディレクトリーにディレクトリーを変更
cd / ディレクトリーをルートディレクトリーに変更
cd 現在のユーザーのホームディレクトリーにディレクトリーを変更
cd /<foo> 絶対ディレクトリーパス "/<foo>" にディレクトリーを変更
cd .. 親ディレクトリーにディレクトリーを変更
cd ~<foo> ユーザー "<foo>" のホームディレクトリーにディレクトリーを変更
cd - 一つ前のディレクトリーにディレクトリーを変更
</etc/motd pager "/etc/motd" の内容をデフォールトのページャーで表示
touch <junkfile> 空ファイル "<junkfile>" を作成
cp <foo> <bar> 既存のファイル "<foo>" を新規ファイル "<bar>" にコピー
rm <junkfile> ファイル "<junkfile>" を削除
mv <foo> <bar> 既存のファイル "<foo>" の名前を新しい名前 "<bar>" に変更 (ディレクトリー "<bar>" が存在不可)
mv <foo> <bar> 既存のファイル "<foo>" を新しい場所 "<bar>/<foo>" に移動 (ディレクトリー "<bar>" が存在しなければいけない)
mv <foo> <bar>/<baz> 既存のファイル "<foo>" を新しい場所の新しい名前のファイル "<bar>/<baz>" に移動 (ディレクトリー "<bar>" が存在しなければいけないが、ディレクトリー "<bar>/<baz>" は存在してはいけない)
chmod 600 <foo> 既存のファイル "<foo>" を他人から読出し不可かつ書込み不可 (全員実行不可)
chmod 644 <foo> 既存のファイル "<foo>" を他人からは読出し可だが書込み不可 (全員実行不可)
chmod 755 <foo> 既存のファイル "<foo>" を他人からは読出し可だが書込み不可 (全員実行可能)
find . -name <pattern> シェルで "<pattern>" にマッチするファイル名を探索 (比較的遅い)
locate -d . <pattern> シェルで "<pattern>" にマッチするファイル名を探索 (定期的に生成されるデーターベースを使い比較的早い)
grep -e "<pattern>" *.html 現ディレクトリーにある ".html" で終わる全ファイルから "<pattern>" のパターンを検索し、該当する全ファイルを表示
top フルスクリーンを用いてプロセス情報を表示し、"q" と押して終了
ps aux | pager 起動中の全プロセスの情報を BSD スタイルの出力を用いて表示
ps -ef | pager 起動中の全プロセスの情報を System-V スタイルの出力を用いて表示
ps aux | grep -e "[e]xim4*" "exim" もしくは "exim4" の起動中の全プロセスを表示
ps axf | pager 起動中の全プロセスの情報を ASCII アート出力を用いて表示
kill <1234> プロセス ID"<1234>" により識別されるプロセスを停止
gzip <foo> Lempel-Ziv コーディング (LZ77) を用いて "<foo>" を圧縮し "<foo>.gz" を作成
gunzip <foo>.gz "<foo>.gz" を解凍して "<foo>" を作成
bzip2 <foo> Burrows-Wheeler ブロックソートテキスト圧縮アルゴリズムと Huffman コーディングを用いて "<foo>" を圧縮し "<foo>.bz2" を作成 (gzip より高圧縮率)
bunzip2 <foo>.bz2 "<foo>.bz2" を解凍して "<foo>" を作成
xz <foo> Lempel–Ziv–Markov鎖アルゴリズムを用いて "<foo>" を圧縮し "<foo>.xz" を作成 (bzip2 より高圧縮率)
unxz <foo>.xz "<foo>.xz" を解凍して "<foo>" を作成
tar -xvf <foo>.tar "<foo>.tar" アーカイブからファイルを展開
tar -xvzf <foo>.tar.gz gzip 圧縮された "<foo>.tar.gz" アーカイブからファイルを展開
tar -xvjf <foo>.tar.bz2 "<foo>.tar.bz2" アーカイブからファイルを展開
tar -xvJf <foo>.tar.xz "<foo>.tar.xz" アーカイブからファイルを展開
tar -cvf <foo>.tar <bar>/ フォルダ "<bar>/" の内容を "<foo>.tar" アーカイブにアーカイブ
tar -cvzf <foo>.tar.gz <bar>/ フォルダ "<bar>/" の内容を "<foo>.tar.gz" アーカイブに圧縮アーカイブ
tar -cvjf <foo>.tar.bz2 <bar>/ フォルダ "<bar>/" の内容を "<foo>.tar.bz2" アーカイブに圧縮アーカイブ
tar -cvJf <foo>.tar.xz <bar>/ フォルダ "<bar>/" の内容を "<foo>.tar.xz" アーカイブに圧縮アーカイブ
zcat README.gz | pager 標準のページャーを用いて圧縮された "README.gz" の内容を表示
zcat README.gz > foo "README.gz" の内容を解凍してファイル "foo" を作成
zcat README.gz >> foo 圧縮された "README.gz" の内容をファイル "foo" の末尾に追加 (ファイルが存在しない場合は事前に作成)

[注記] 注記

Unix は "." で始まるファイル名を隠す伝統があります。それらは伝統的には特定の設定情報やユーザーの嗜好を含むファイルです。

[注記] 注記

cd コマンドに関しては builtins(7) を参照下さい。

[注記] 注記

最小限の Debian システムのデフォールトのページャーは more(1) で、スクロールバックができません。less パッケージを "apt-get install less" と言うコマンドラインでインストールすると、less(1) が デフォールトのページャーになりカーソールキーでスクロールバック出来るようになります。

[注記] 注記

上記の "ps aux | grep -e "[e]xim4*"" コマンド中に現れる正規表現中の "[" と "]" は grep が自分自身にマッチするのを避けることを可能とします。正規表現中の "4*" は数字 "4" の0回以上の繰り返しを意味するので、grep が "exim" と "exim4" の両方にマッチすることが可能になります。 "*" はシェルのファイルネームのグロブでも正規表現ででも使われますが、これらの意味は異なります。grep(1) から正規表現を学びましょう。

上記のコマンドを訓練として用いて、ディレクトリーを渡り歩き、システムの中を覗き込んで下さい。コンソールのコマンドに関して質問がある場合は、必ずマニュアルページを読んでみて下さい。

例えば、次を試してみて下さい:

$ man man
$ man bash
$ man builtins
$ man grep
$ man ls

マンページのスタイルは慣れるのに少々大変かもしれません。なぜなら特に比較的旧式の非常に伝統的なマンページは比較的言葉が少ないからです。しかし一旦慣れるとその簡潔さの良さが分かります。

GNU や BSD 由来を含む多くの Unix 的なコマンドは次のように (場合によっては一切の引数無しで) 起動すると簡単なヘルプ情報を表示します。

$ <コマンド名> --help
$ <コマンド名> -h

1.5. シェルプロンプト

Debian システムの使い方が少し分かったでしょう。Debian システム上でのコマンド実行のメカニズムを掘り下げます。初心者のためにちょっと簡略化してみました。正確な説明は bash(1) を参照下さい。

シンプルなコマンドは、次の要素のシーケンスとなります。

  1. 変数代入 (任意)
  2. コマンド名
  3. 引数 (任意)
  4. リダイレクト (任意: >>><<< 等。)
  5. 制御演算子 (任意: &&|| と <改行> と ;& ())

1.5.1. コマンド実行と環境変数

環境変数の値は Unix コマンドの挙動を変えます。

環境変数のデフォールト値は PAM システムが初期設定されます。その後次のような何らかのアプリケーションプログラムにより再設定されているかもしれません。

  • gdm のようなディスプレーマネージャーは環境変数を再設定します。
  • "~/bash_profile" や "~/.bashrc" にあるシェル起動コードの中でシェルは環境変数を再設定します。

1.5.2. "$LANG" 変数

"$LANG" 変数に与えられる完全なロケール値は3つの部分からなります: "xx_YY.ZZZZ"。


言語コードと国コードは "info gettext" 中の該当記述を参照下さい。

現代的な Debian システム上では、十分な理由と必要な知見をもって歴史的なコードセットを特段希望しない限り、常にコードセットを UTF-8 と設定すべきです。

ロケールの詳細に関しては、「ロケール」を参照下さい。

[注記] 注記

"LANG=en_US" は、"LANG=C" でも、"LANG=en_US.UTF-8" でもありません。それは "LANG=en_US.ISO-8859-1" です (「符号化方式の基本」参照)。

表1.18 推奨ロケールのリスト

推奨ロケール 言語 (地域)
en_US.UTF-8 英語 (米国)
en_GB.UTF-8 英語 (英国)
fr_FR.UTF-8 フランス語 (フランス)
de_DE.UTF-8 ドイツ語 (ドイツ)
it_IT.UTF-8 イタリア語 (イタリア)
es_ES.UTF-8 スペイン語 (スペイン)
ca_ES.UTF-8 カタラン語 (スペイン)
sv_SE.UTF-8 スウェーデン語 (スウェーデン)
pt_BR.UTF-8 ポルトガル語 (ブラジル)
ru_RU.UTF-8 ロシア語 (ロシア)
zh_CN.UTF-8 中国語 (中華人民共和国)
zh_TW.UTF-8 中国語 (台湾_R.O.C.)
ja_JP.UTF-8 日本語 (日本)
ko_KR.UTF-8 韓国語 (大韓民国)
vi_VN.UTF-8 ベトナム語 (ベトナム)

典型的なコマンドの実行は次のようなシェルの行シーケンスを用います。

$ date
Sun Jun  3 10:27:39 JST 2007
$ LANG=fr_FR.UTF-8 date
dimanche 3 juin 2007, 10:27:33 (UTC+0900)

以上で、date(1) プログラムは異なる環境変数 "$LANG" 値で実行されます。

  • 最初のコマンドでは、"$LANG" はシステムでフォルトのロケール値 "en_US.UTF-8" に設定されます。
  • 二番目のコマンドでは、"$LANG" はフランス語の UTF-8 ロケール値 "fr_FR.UTF-8" に設定されます。

ほとんどのコマンド実行は頭に環境変数定義をつけないのが普通です。上記の例の代わりに次のように実行します。

$ LANG=fr_FR.UTF-8
$ date
dimanche 3 juin 2007, 10:27:33 (UTC+0900)

ここで確認できるように、コマンドの出力は環境変数に影響されフランス語の出力となっています。もし環境変数を (例えばシェルスクリプトを呼んでいて) サブプロセスに引き継ぎたい際には、次のように環境変数を export (エクスポート) しなければいけません。

$ export LANG
[ティップ] ティップ

バグ報告をする際には、非英語環境を使っているなら、プログラムを "LANG=en_US.UTF-8" の下で実行し確認することが望ましいです。

"$LANG" とこれに関連した環境変数に関しては、locale(5) と locale(7) を参照下さい。

[注記] 注記

特段必要がなければ "$LC_*" 変数を避けて、"$LANG" 変数のみを用いてシステム環境設定する事をお薦めします。

1.5.3. "$PATH" 変数

シェルにコマンドを打ち込んだ際に、シェルは "$PATH" 環境変数にリストされたディレクトリーのリストから検索します。"$PATH" 環境変数の値は、シェルの検索パスとも呼ばれます。

標準の Debian インストールでは、ユーザーアカウントの "$PATH" 環境変数には "/sbin" や "/usr/sbin" が含まれないかもしれません。例えば、ifconfig コマンドは "/sbin/ifconfig" とフルパスを使って実行する必要があります。(類似の ip コマンドは "/bin" にあります。)

Bash シェルの "$PATH" 環境変数は、"~/.bash_profile" か "~/.bashrc" ファイルで変更できます。

1.5.4. "$HOME" 変数

多くのコマンドはユーザー特定の設定をホームディレクトリーに保存し、その内容でコマンドの挙動が変わります。ホームディレクトリーは "$HOME" 環境変数で指定されます。

表1.19 "$HOME" の値のリスト

"$HOME" の値 プログラム実行状況
/ init プロセスが実行するプログラム (デーモン)
/root 通常の root シェルから実行されるプログラム
/home/<normal_user> 通常のユーザーシェルから実行されるプログラム
/home/<normal_user> 通常のユーザーの GUI デスクトップメニューから実行されるプログラム
/home/<normal_user> "sudo program" を用いて root として実行されるプログラム
/root "sudo -H program" を用いて root として実行されるプログラム

[ティップ] ティップ

シェルは、"~/" を現ユーザーのホームディレクトリーである "$HOME/" へと展開します。シェルは、"~foo/" をユーザー foo のホームディレクトリーである "/home/foo/" へと展開します。

1.5.5. コマンドラインオプション

プログラムコマンドによっては引数があります。引数は "-" か "--" で始まり、オプションと呼ばれ、コマンドの挙動をコントロールします。

$ date
Mon Oct 27 23:02:09 CET 2003
$ date -R
Mon, 27 Oct 2003 23:02:40 +0100

上記で、コマンドライン引数 "-R" が date(1) の挙動を RFC2822 準拠の日付文字列出力と変えています。

1.5.6. シェルグロブ

ファイル名を全てタイプせずにファイルのグループをコマンド処理したいことがよくあります。シェルのグロブ (ワイルドカードとも時々呼ばれる) を用いたファイル名のパターン展開を用いるとこのニーズに答えられます。

表1.20 シェルグロブパターン

シェルグロブパターン マッチルールの説明
* "." で始まらないファイル (部分) 名
.* "." で始まるファイル (部分) 名
? 1文字
[…] 括弧中の1文字
[a-z] "a" と "z" の範囲間の1文字
[^…] 括弧内 ("^" 以外) に含まれる文字以外の1文字

例えば、次を試してみて下さい:

$ mkdir junk; cd junk; touch 1.txt 2.txt 3.c 4.h .5.txt ..6.txt
$ echo *.txt
1.txt 2.txt
$ echo *
1.txt 2.txt 3.c 4.h
$ echo *.[hc]
3.c 4.h
$ echo .*
. .. .5.txt ..6.txt
$ echo .*[^.]*
.5.txt ..6.txt
$ echo [^1-3]*
4.h
$ cd ..; rm -rf junk

glob(7) を参照下さい。

[注記] 注記

通常のシェルのファイル名の展開と違い、find(1) が "-name" テスト他でシェルパターン "*" をテストする際にはファイル名先頭の "." ともマッチします。(新 POSIX 機能)

[注記] 注記

BASH は shopt 組み込みオプションで "dotglob" や "noglob" や "nocaseglob" や "nullglob" や "nocaseglob" や "extglob" などとすることでグロブ挙動を色々変更できます。bash(1) を参照下さい。

1.5.7. コマンドの戻り値

各コマンドは終了ステータスを戻り値 (変数: "$?") として返します。

表1.21 コマンドの終了コード

コマンドの終了状態 戻り値の数値 戻り値の論理値
成功 ゼロ、0
失敗 非ゼロ、-1

例えば、次を試してみて下さい。

$ [ 1 = 1 ] ; echo $?
0
$ [ 1 = 2 ] ; echo $?
1
[注記] 注記

シェルの論理的な観点では、成功は、0 (ゼロ) の値を持つ論理的として扱われることに注意して下さい。少々これは非直感的なのでここで再確認する必要があります。

1.5.8. 典型的なコマンドシーケンスとシェルリディレクション

次に挙げるシェルコマンドの一部として一行でタイプするシェルコマンドの慣用句を覚えましょう。

表1.22 シェルコマンドの慣用句

コマンドの慣用句 説明
command & command をサブシェル中でバックグラウンド実行
command1 | command2 command1 の標準出力を command2 の標準入力に パイプ (同時並行で実行)
command1 2>&1 | command2 command1 の標準出力と標準エラー出力を command2 の標準入力にパイプ (同時進行で実行)
command1 ; command2 command1 を実行し、後に続いて command2 を実行
command1 && command2 command1 を実行; もし成功したら、 後に続いて command2 を実行 (command1 command2 の両方が成功したら、正常終了を返す)
command1 || command2 command1 を実行; もし成功しなかったら、後に続いて command2 を実行 (command1 command2 のどちらかが成功したら、正常終了を返す)
command > foo command の標準出力を foo ファイルにリダイレクト (上書き)
command 2> foo command の標準エラー出力を foo ファイルにリダイレクト (上書き)
command >> foo command の標準出力を foo ファイルにリダイレクト (追記)
command 2>> foo command の標準エラー出力を foo ファイルにリダイレクト (追記)
command > foo 2>&1 command の標準出力と標準エラー出力を foo ファイルにリダイレクト
command < foo command の標準入力を foo ファイルからリダイレクト
command << delimiter command の標準入力を "delimiter" に出会うまでのこれに続く行からリダイレクト (ヒアドキュメント)
command <<- delimiter command の標準入力を "delimiter" に出会うまでのこれに続く行からリダイレクト (ヒアドキュメント、行頭のタブ文字は入力から削除)

Debian システムはマルチタスクシステムです。バックグラウンドジョブを使うと単一シェルの下で複数プログラムを実行可能にします。バックグラウンドジョブの管理にはシェル内部組み込みコマンドの jobsfgbgkill を使います。bash(1) マンページ中の "SIGNALS" と "JOB CONTROL" セクションや builtins(1) を参照下さい。

例えば、次を試してみて下さい:

$ </etc/motd pager
$ pager </etc/motd
$ pager /etc/motd
$ cat /etc/motd | pager

4つ全ての例が全く同じ表示をしますが、最後の例は余計な cat コマンドを実行するので理由なくリソースの無駄遣いをします。

シェルでは exec 組み込みコマンドを任意のファイルディスクリプタとともに使いファイルをオープンすることができます。

$ echo Hello >foo
$ exec 3<foo 4>bar  # open files
$ cat <&3 >&4       # redirect stdin to 3, stdout to 4
$ exec 3<&- 4>&-    # close files
$ cat bar
Hello

上記で、"n<&-" と "n>&-" はファイルディスクリプタ "n" をクローズするという意味です。

ファイルデスクリプタの 0-2 は事前定義されています。

表1.23 事前定義されたファイルデスクリプタ

デバイス 説明 ファイルデスクリプタ
stdin 標準出力 0
stdout 標準出力 1
stderr 標準エラー出力 2

1.5.9. コマンドエリアス

良く使うコマンドにエリアスを設定できます。

例えば、次を試してみて下さい:

$ alias la='ls -la'

こうすると、"la" が "ls -la" の短縮形として機能し、全てのファイルを長いリスト形式でリストします。

既存のエリアスは alias でリストできます (bash(1) の "SHELL BUILTIN COMMANDS" 参照)。

$ alias
...
alias la='ls -la'

type 内部コマンドを使うと正確なパスやコマンドの正体を識別できます (bash(1) の "SHELL BUILTIN COMMANDS" 下参照)。

例えば、次を試してみて下さい:

$ type ls
ls is hashed (/bin/ls)
$ type la
la is aliased to ls -la
$ type echo
echo is a shell builtin
$ type file
file is /usr/bin/file

上記で、ls は最近探索されましたが "file" は最近探索されていませので、"ls" は "ハッシュされた" つまりシェルには "ls" コマンドの場所を高速アクセスのために内部記録していると表示されます。

[ティップ] ティップ

「着色化されたコマンド」を参照下さい。

1.6. Unix 的テキスト処理

Unix 的作業環境では、テキスト処理はテキストを標準テキスト処理ツールの連鎖パイプを通す行います。これは決定的な Unix の発明です。

1.6.1. Unix テキストツール

Unix 的システムでしばしば使われる標準テキスト処理ツールがいくつかあります。

  • 正規表現無使用:

    • cat(1) はファイルをつなぎ合わせ全てを出力します。
    • tac(1) はファイルをつなぎ合わせ逆順で出力します。
    • cut(1) は行の一部を選択し出力します。
    • head(1) はファイルの最初の部分を選択し出力します。
    • tail(1) はファイルの最後の部分を選択し出力します。
    • sort(1) は行を順番に並び替えます。
    • uniq(1) は順番に並べられたファイルから重複行を削除します。
    • tr(1) は文字を変換削除します。
    • diff(1) は1行ごとにファイルを比較します。
  • 基本正規表現 (BRE) 使用:

    • egrep(1) はテキストのパターンマッチをします。
    • ed(1) は原始的な行エディター。
    • sed(1) はストリームエディター。
    • vim(1) はスクリーンエディター。
    • emacs(1) はスクリーンエディター。(ちょっと拡張された BRE)
  • 拡張正規表現 (ERE) 使用:

    • egrep(1) はテキストのパターンマッチをします。
    • awk(1) は単純なテキスト処理をします。
    • tcl(3tcl) は考え得る全てのテキスト処理をします: re_syntax(3)。時々 tk(3tk) とともに使用されます。
    • perl(1) は考え得る全てのテキスト処理をします。perlre(1).
    • pcregrep パッケージの pcregrep(1) はテキストのパターンマッチを Perl 互換正規表現 (PCRE) パターンを使ってします。
    • re モジュールとともに使うことで python(1) は考え得る全てのテキスト処理をします。"/usr/share/doc/python/html/index.html" を参照下さい。

もしこれらのコマンドが正確にどう動作するかを確認したいなら、"man command" を使って自分で見つけましょう。

[注記] 注記

ソート順や範囲表現はロケールに依存します。コマンドの伝統的挙動を得たい際には、"LANG=C" をコマンドの前に付けて UTF-8 ロケールではなく C ロケールでコマンドを使います。(「"$LANG" 変数」「ロケール」を参照)。

[注記] 注記

Perl 正規表現 (perlre(1)) と Perl 互換正規表現 (PCRE)re モジュールで提供される Python 正規表現は ERE に多くの共通の拡張をしています。

1.6.2. 正規表現

正規表現は多くのテキスト処理ツールで使われています。シェルグロブに類似していますがより複雑で強力です。

正規表現はマッチするパターンを表現し、テキスト文字とメタ文字からなっています。

メタ文字は特別な意味を持った文字です。上記のようにテキストツールによって、BREERE の2つの主要なスタイルがあります。

表1.24 BRE と ERE のメタ文字

BRE ERE 正規表現の説明
\ . [ ] ^ $ * \ . [ ] ^ $ * 共通のメタ文字
\+ \? \( \) \{ \} \|   "\" でエスケープされた、BRE のみで用いるメタ文字
  + ? ( ) { } | "\" でエスケープされ無い、ERE のみで用いるメタ文字
c c 非メタ文字 "c" にマッチ
\c \c c" 自身がメタ文字でも "c" というそのままの文字とマッチ
. . 改行を含めた如何なる文字ともマッチ
^ ^ 文字列の最初とマッチ
$ $ 文字列の最後とマッチ
\< \< 単語先頭とマッチ
\> \> 単語末尾とマッチ
\[abc…\] [abc…] "abc…" のいずれかの文字にマッチ
\[^abc…\] [^abc…] "abc…" 以外の文字にマッチ
r* r* "r" という正規表現の0回以上にマッチ
r\+ r+ "r" という正規表現の1回以上にマッチ
r\? r? "r" という正規表現の0回か1回にマッチ
r1\|r2 r1|r2 "r1" か "r2" という正規表現のいずれかにマッチ
\(r1\|r2\) (r1|r2) "r1" か "r2" という正規表現のいずれかにマッチし、それを括弧で囲まれた正規表現と見なす

emacs の正規表現は、ERE 同様の "+" と "?" をメタ文字と扱う拡張をしてはありますが、基本的に BRE です。これら文字を emacs の正規表現で "\" でエスケープする必要はありません。

grep(1) をつかうと正規表現を使って文字列探索ができます。

例えば、次を試してみて下さい:

$ egrep 'GNU.*LICENSE|Yoyodyne' /usr/share/common-licenses/GPL
GNU GENERAL PUBLIC LICENSE
GNU GENERAL PUBLIC LICENSE
Yoyodyne, Inc., hereby disclaims all copyright interest in the program
[ティップ] ティップ

「着色化されたコマンド」を参照下さい。

1.6.3. 置換式

置換式の場合、一部の文字に特別な意味があります

表1.25 置換式

置換式 置換式を置換する文字の説明
& 正規表現がマッチしたもの (emacs では \& を使用)
\n n番目の括弧で囲まれた正規表現にマッチしたもの ("n" は数字)

Perl の置換式では、"\n" の代わりに "$n" をつかい、"&" には特段の意味はありません。

例えば、次を試してみて下さい:

$ echo zzz1abc2efg3hij4 | \
sed -e 's/\(1[a-z]*\)[0-9]*\(.*\)$/=&=/'
zzz=1abc2efg3hij4=
$ echo zzz1abc2efg3hij4 | \
sed -e 's/\(1[a-z]*\)[0-9]*\(.*\)$/\2===\1/'
zzzefg3hij4===1abc
$ echo zzz1abc2efg3hij4 | \
perl -pe 's/(1[a-z]*)[0-9]*(.*)$/$2===$1/'
zzzefg3hij4===1abc
$ echo zzz1abc2efg3hij4 | \
perl -pe 's/(1[a-z]*)[0-9]*(.*)$/=&=/'
zzz=&=

ここで、括弧で囲まれた正規表現のスタイルと、マッチした文字列が異なるツール上でテキスト置換処理にどう使われるかとに注目下さい。

これらの正規表現は一部エディター内でカーソールの動きやテキスト置換アクションに対しても使えます。

シェルコマンドラインの行末のバックスラッシュ "\" は改行をホワイトスペース文字としてエスケープするので、シェルコマンドライン入力を次行に継続させます。

これらのコマンドを習うために、関連するマニュアルページを全て読んで下さい。

1.6.4. 正規表現を使ったグローバル置換

ed(1) コマンドは次のようにすると "file" 中に存在する全ての "FROM_REGEX" を "TO_TEXT" で置換できます。

$ ed file <<EOF
,s/FROM_REGEX/TO_TEXT/g
w
q
EOF

sed(1) コマンドは次のようにすると "file" 中に存在する全ての "FROM_REGEX" を "TO_TEXT" で置換できます。

$ sed file 's/FROM_REGEX/TO_TEXT/g' | sponge file
[ティップ] ティップ

sponge(8) コマンドは moreutils パッケージが提供する非標準の Unix ツールです。これはオリジナルファイルの上書きがしたい際に非常に有用です。

vim(1) コマンドは ex(1) コマンドを使い次のようにすると "file" 中に存在する全ての "FROM_REGEX" を "TO_TEXT" で置換できます。

$ vim '+%s/FROM_REGEX/TO_TEXT/gc' '+w' '+q' file
[ティップ] ティップ

上記の "c" フラグをにより各置換毎に対話型の確認をします。

複数ファイル ("file1" と "file2" と "file3") を vim(1) や perl(1) で同様に正規表現を用いて処理できます。

$ vim '+argdo %s/FROM_REGEX/TO_TEXT/ge|update' '+q' file1 file2 file3
[ティップ] ティップ

上記の "e" フラグをにより "No match" エラーでマッピングが停止することを防ぎます。

$ perl -i -p -e 's/FROM_REGEX/TO_TEXT/g;' file1 file2 file3

perl(1) の例中で、"-i" はその場での編集、"-p" はファイルに関する暗黙的なループを意味します。

[ティップ] ティップ

"-i" の代わりに "-i.bak" という引数を用いるとオリジナルファイル名に ".bak" をつけたファイル名でオリジナルファイルが保管されます。複雑な置換のエラーからの復元が簡単にできます。

[注記] 注記

ed(1) や vim(1) は BRE です。一方、perl(1) は ERE です。

1.6.5. テキストファイルからのデーター抽出

2004年以前の元 Debian リーダの名前と就任日がスペースで分割されたフォーマットでリストされている "DPL" と呼ばれるファイルを考えてみましょう。

Ian     Murdock   August  1993
Bruce   Perens    April   1996
Ian     Jackson   January 1998
Wichert Akkerman  January 1999
Ben     Collins   April   2001
Bdale   Garbee    April   2002
Martin  Michlmayr March   2003
[ティップ] ティップ

最新のDebian のリーダーの歴史に関しては、"A Brief History of Debian" を参照下さい。

Awk はこういったタイプのファイルからデーターを抽出するために良く使われます。

例えば、次を試してみて下さい:

$ awk '{ print $3 }' <DPL                   # month started
August
April
January
January
April
April
March
$ awk '($1=="Ian") { print }' <DPL          # DPL called Ian
Ian     Murdock   August  1993
Ian     Jackson   January 1998
$ awk '($2=="Perens") { print $3,$4 }' <DPL # When Perens started
April 1996

Bash などのシェルもこれらのファイルを解釈するのに使えます。

例えば、次を試してみて下さい:

$ while read first last month year; do
    echo $month
  done <DPL
... 最初の Awk 例と同じ出力

ここで、read 組込みコマンドは "$IFS" (内部フィールドセパレータ) を用いて行を単語単位で分割します。

"$IFS" を ":" に変更すると、"/etc/passwd" をシェルでうまく解読できます。

$ oldIFS="$IFS"   # save old value
$ IFS=':'
$ while read user password uid gid rest_of_line; do
    if [ "$user" = "bozo" ]; then
      echo "$user's ID is $uid"
    fi
  done < /etc/passwd
bozo's ID is 1000
$ IFS="$oldIFS"   # restore old value

(同じことを Awk を使って行うには、フィールドセパレータ設定は "FS=':'" とします。)

IFS はパラメーター展開、コマンド置換、数式展開の結果を分割するためにもシェルにより使われます。これはダブルクォートやシングルクォートされた単語内では発生しません。IFS の標準値は <space> と <tab> と <newline> の組合せです。

シェルの IFS トリックを注意深く使って下さい。シェルがスクリプトの一部を入力として解釈した場合に、奇妙なことが起きるかもしれません。

$ IFS=":,"                        # use ":" and "," as IFS
$ echo IFS=$IFS,   IFS="$IFS"     # echo is a Bash builtin
IFS=  , IFS=:,
$ date -R                         # just a command output
Sat, 23 Aug 2003 08:30:15 +0200
$ echo $(date -R)                 # sub shell --> input to main shell
Sat  23 Aug 2003 08 30 36 +0200
$ unset IFS                       # reset IFS to the default
$ echo $(date -R)
Sat, 23 Aug 2003 08:30:50 +0200

1.6.6. コマンドをパイプするためのスクリプト断片

次のスクリプトはパイプの一部として素晴らしいことをします。

表1.26 コマンドをパイプするためのスクリプト断片

スクリプト断片 (1行入力) コマンドの効果
find /usr -print "/usr" の下の全ファイル発見
seq 1 100 1から100までプリント
| xargs -n 1 <command> パイプからの各項目を引数としてコマンドを反復実行
| xargs -n 1 echo パイプからのホワイトスペースで分離された項目を行に分割
| xargs echo パイプからの全ての行を1行にマージ
| grep -e <regex_pattern> <regex_pattern> を含む行を抽出
| grep -v -e <regex_pattern> <regex_pattern> を含まない行を抽出
| cut -d: -f3 - ":" で区切られた3番目のフィールドを抽出 (passwd ファイルなど)
| awk '{ print $3 }' ホワイトスペースで区切られた3番目のフィールドを抽出
| awk -F'\t' '{ print $3 }' タブで区切られた3番目のフィールドを抽出
| col -bx バックスペースを削除し、タブをスベースに変換
| expand - タブをスベースに変換
| sort| uniq 入力をソートし重複箇所を削除
| tr 'A-Z' 'a-z' 大文字を小文字に変換
| tr -d '\n' 複数行を1行に連結
| tr -d '\r' キャリッジリターンを削除
| sed 's/^/# /' 各行頭に "#" を追加
| sed 's/\.ext//g' ".ext" を削除
| sed -n -e 2p 2番目の行を表示
| head -n 2 - 最初の2行を表示
| tail -n 2 - 最後の2行を表示

1行のシェルスクリプトは find(1) や xargs(1) を使って非常に複雑な操作を多くのファイルに繰り返し実行できます。「ファイル選択の慣用句」「ファイルに関してループしながらコマンドを反復実行」を参照下さい。

シェルの対話モードを使うのが複雑過ぎるようになったときには、シェルのスクリプトを書くのも一計です (「シェルスクリプト」参照)。